津軽三味線のチューニング・調弦と狂わない糸のしごき方

こんにちは。

津軽三味線 唄うたいの「つむぎ人HIDE」です。

津軽三味線、かっこいいですね!

舞台に上がり、はじめに「調子を合わせる姿」絵になります。

津軽三味線は、この「調子を合わせる」ところからすでに演奏が始まっています。

 

舞台上で椅子に座り、津軽三味線を膝の上に少し立て気味に構え、竿を耳元に近づけ ます。

「一の糸」を右手の人差し指で軽く弾き、音を鳴らします。

続いて、左手で「一の糸」の糸巻きを力強く握りしめます。

それと同時に、口に加えた調子笛を少し鳴らします。

左手の糸巻きを、緩めたり張ったりと調子笛に合わせて音程を調整します。

会場は静まり返り、観衆は息をこらえて見守ります。

 

三味の糸のかすかな音が響き渡ります。

「ビィ〜〜〜〜〜ン」

長く長く、鳴り続ける「一の糸音(一弦の音)」。

そのまま「触り」をつける為、一度消えかけた音が再び響き渡ります。

 

「触り」とは、小さなネジ式の装置の事です。

振動する「一の糸」にこの「触り」の山がかすかに触れることで、「ビィ〜〜〜〜〜ン」とより長く響くように聞こえます。

この小さなネジをまわし、「一の糸」と「触りの山」の触れる加減を調整することを「触りを付ける」と表現します。

触りを付けるのは、「一の糸」の音程を合わせた直後です。

続いて、バチを握り直し、三味線を構え直します。

右手に握りしめたバチを、大きく振りかぶります。

右手を振り下ろすと同時に、静寂を引き裂くような轟音が、会場に響き渡ります。

「ベーーーン!」

うーん、この時の迫力を書き表す日本語が、この「ベーン」しか思い当たらないのが残念でなりません。

そして、そのまま「一の糸」に対して、「二の糸」、「三の糸」とリズミカルに調子を合わせながら、演奏に突入して行きます。

これが、津軽三味線独特の演奏冒頭部のパフォーマンスであります。

わお〜!こうして文章にするとなんか感動的ですね!

でも、実際の演奏を見ると、本当にかっこいいですよね!

 

ところが、この津軽三味線のチューニング、意外と難しいんです。

初心者に限らず、習得するのに時間がかかる部分でもあります。

調子がピタッと合いません。

また、「せっかくあっていたチューニングも演奏している間に、すぐに狂ってしまう」なんてことがよくあります。

でも、大丈夫!

これも、コツさえつかめば怖いものはありません。

今回は、「津軽三味線の調子の合わせ方と演奏中に調子がゆるまない秘訣」をわかりやすく、画像と言葉で解説したいと思います。

 

チューニング(調子を合わせる)って?

三味線は竿先の天神にある糸巻きを回し、糸の張り具合を調整することにより、音程が調整できます。

この調整により、音程を決まった高さに合わせることを「調子を合わせる」。または、「チューニング」すると言います。

ピアノの調律は、「音叉(おんさ)」という器具を使って、プロの調律師さんが完璧にあわせでくれます。

調律師さんは、ピアノのAのキーを、440ヘルツ音叉(オンサ)「ラ」の音にあわせます。

三味線の場合は、音叉と同じ役割をする道具として、「調子笛」というのがあります。

三味線のチューニングは、この調子笛などを使い自分で調整します。

この調子笛には、13の吹き口があります。

この調子笛を使って音を出し、それと三味線の「一の糸」の音を合わせます。

440ヘルツのA(ラ)の音に合わせることを「1本調子」といいます。

つぎに半音上がったB♭の音に合わせることを「2本調子」といいます。

さらに、Bの音が「3本調子」、C♭の音が「4本調子」と続いていきます。

調子笛は、1本調子から12本調子とオクターブ上の1本調子まで13口あります。

1本調子から12調子までの音の高さは、A〜G♯とオクターブひとつ上のAまでとなります。

 

歌い手さんの声の調子(高さ)に、三味線の調子を合わせる

次に、「三味線を何本調子に合わせるか?」について説明します。

三味線が1番良い音がするのは、一の糸を5本調子(=C#の音)くらいに合わせたときでしょう。

これより低い調子だと、音に張りが無くなります。

また、これより高い調子だと、音が硬くなり過ぎます。

しかし、民謡の伴奏などをする場合、三味線の調子は「歌い手さんの声の高さ」に合わせる事になります。

例えば、歌い手さんが高音部で苦しいようであれば、三味線の調子を下げます。

そして、1番良い声で歌える高さになるように、調子を合わせてもらいます。

しかし、調子笛で1本下がれば、半音下がることになります。

半音下がると、糸の張り(テンション)も下がり、三味線の音色もかわってきます。

民謡の世界では、高音で歌う歌い手さんの方が評価されるところがあります。

例えば、若く張りのある高音で歌う「津軽じょんがら節」は聞くものを魅了する力があります。

で、僕はそんなに声が低いわけでは無いんですが、「津軽あいや節」を歌うときは三味線は「みず2本」に合わせます。

「みず」とは、「マイナス」という意味です。「みず二本」は「1本(A)から2つ低い音」という意味になります。

1本がラ(A)の音なので、その下のソ♯(G#)のまた下のソ(G)です

みず2本だと、ほとんど糸の張りも無いので、三味線弾きさんには嫌われます。ははは!

僕の声は男性では結構高い方なんですが、プロの民謡歌手の皆さんはもっと高い声で歌われます。

同じ「津軽あいや節」を男性でも2本調子、3本調子で歌うのが普通くらいです。

「本調子」「二上り」「三下り」とは?

さて、ここまでは一の糸をどの高さに合わせるか?という、絶対音のお話しでした。

ここからは、「合わせた一の糸に対して『二の糸』『三の糸』をどう合わせるか?」という相対音の話しに移ります。

 

まずは、三味線の調子の合わせ方は3通りあるのはご存知でしょうか?

それぞれ、「本調子」「二上り」「三下り」です。

 

本調子

三味線の調子の合わせ方の一つに本調子があります。

本調子では、「二の糸」を「一の糸」から「5つ」上の音に、「三の糸」を「一の糸」から1オクターブ上の音に合わせます。

下の写真のようにピアノの鍵盤で数えるとわかりやすいですね。

例えば、一の糸を4本のC(ド)の音にあわせるとします。

そして、この場合二の糸を一の糸から5個目の鍵盤の音であるF(ファ)に、三の糸を、一の糸から一オクターブ上の音であるC(ド)に合わせます。

これが本調子です。

もし、歌い手さんから「8本の本調子で!」と言われたら、一の糸は8本=E(ミ)、に合わせる事になります。

そして、二の糸は、そこから5つ上のA(ラ)、三の糸は1オクターブ上のE(ミ)に合わせる事になります。(下の写真参照)

この本調子で演奏される代表的な津軽民謡には、「津軽おはら節」などがあります。

二上り

続いて、「二上り」という調子の合わせ方を紹介します。

「二上り」では二の糸を一の糸からの7つ上の音に、三の糸を一の糸から1オクターブ上の音に合わせます。

つまり、先ほど紹介した本調子から、二の糸の高さが2つ上がっていることになります。

これが、「二上り」いう名称の由来になっています。

例えば、一の糸をC(ド)に合わせるとします。

この場合二の糸は一の糸から7つ上のG(ソ)、三の糸は一の糸から1オクターブ上のC(ド)となります。

 

二上りの曲は、明るい感じのものが多いです。例えば、「津軽甚句」や、「津軽じょんがら節」などがあります。

三下り

最後に「三下り」という調子の合わせ方を紹介します。

三下りでは二の糸を一の糸から5つ上の音に、そして三の糸を一の糸から10個上の音に合わせます。

例えば、一の糸をC(ド)に合わせるとします。

この時、二の糸は5つ上のF(ファ)、三の糸は10個上のb♭(シ♭)となります。

これを本調子と比較すると、三の糸の音の高さを2つ下げたことになります。

三の糸を2つ下げた調子のことなので「三下り」と呼ばれます。

三下りの曲は、暗い雰囲気のものが多いです。

代表的な曲としては、「津軽三下り」などがあります。

 

ここまで、長々とチューニングについてのうんちくにお付き合いいただきありがとうございます。

ここからは「いちばん簡単な三味線のチューニングの方法」を解説したいとおもいます。

 三味線の本調子・二上り・三下りの音の高さの早見表

早見表 本調子

一の糸 二の糸 三の糸
1本 A D A
2本  B♭  E♭  B♭
3本 B E B
4本 C F  C
5本 C #  F#  C #
6本 D G D
7本 E ♭ G#  E♭
8本 E A E
9本 F B♭ F
10本 F# B F #
11本 G C G
12本 G# C# G#

早見表 二上り

一の糸 二の糸 三の糸
1本 A E A
2本  B♭  F  B♭
3本 B  F# B
4本 C  G  C
5本 C #  G#  C #
6本 D A D
7本 E ♭  B♭  E♭
8本 E B E
9本 F C F
10本 F# C# F #
11本 G D G
12本 G# E♭ G#

早見表 三下り

一の糸 二の糸 三の糸
1本 A D G
2本  B♭  E♭ G#
3本 B  E A
4本 C F B♭
5本 C # F#  B
6本 D G C
7本 E ♭  G# C#
8本 E A D
9本 F B♭ E♭
10本 F# B E
11本 G C F
12本 G# C# F#

 

いちばん簡単な三味線のチューニングの方法

まずは、4本の二上り、つまり一の糸をC(ド)に合わせた二上りに調子を合わせる場合を考えます。

三味線を構えたらまずは、調子笛の4本C(ド)の音を鳴らしてください。

そして、左手は糸に触れないようにしながら、三味線の一の糸を鳴らして下さい。

調子笛の音と三味線の音が同じになるように、竿先の天神についている糸巻きで一の糸の調子を調整して下さい。

次にニの糸の音を、G(ソ)に合わせます。これは、一の糸の六のツボを押さえた音(ソ)と同じになります。

まずは、一の糸の六のツボを押さえ右手の人差し指で軽く弾きます。

そして、二の糸がそれと同じ高さになるように、糸巻きを回して調子を合わせます。

続いて、三の糸を合わせます。

三の糸は一の糸の1オクターブ上の音になります。

このため、一の糸の開放弦の音を鳴らして、三の糸がその1オクターブ上の同じ高さになるように、糸巻きをまわして調整します。

もし、貴方がオクターブ上の同じ高さがわかり難いようでしたら、別の方法があります。

二の糸の4のツボを押さえて鳴らすと、一の糸から1オクターブ上の高さになります。三の糸がこれと同じ高さになるように糸巻きをまわして調整してください。

これで、チューニングは完了です。

 

しかし、実際は舞台上でこういうチューニングの仕方をしてる人は、滅多に見かけません。

 

 

音の高さを耳で覚えているので、器具などを使わなくてもダイレクトに合わすことができるんです。

それが、カッコイイんですよね!

 

曲が変われば、調子(チューニング)もどんどん変わっていきます。

いかに手際よく調子を変えるかが、腕の見せ所でもあります。

 

初めからは難しいでしょう。

しかし、積極的に音合わせにチャレンジして、相対音感を鍛えていきましょう。

相対音感とは基準になる音程が決まれば、その他の音程も自然とわかることを言います。

あなたもすぐに、なんとなくあわせられるようになると思います。

演奏してみて、違和感があれば狂っている証拠です。

それにもめげずに、何回でも自分で調整する事が上達への近道です。

 

それでも難しいというあなたのための「超超超、簡単!」なチューニングの方法!

ここで、登場です。チューナー君です。

いろんな種類が売っています。

チューナーとは、上の写真のような電子機器のことです。

三味線 の音を拾って、いまどの音が鳴っているかを表示してくれる道具です。

合わせたい音程よりも鳴っている音程が低いと、メモリが左に振れます。

逆に、音程が高いとメモリが右に振れます。

ピタリと合えば、メモリが真ん中で止まります。

 

持ってないという方は僕にメール下さい。記念にひとつ差し上げます!

 

チューナーには、クリップ式とマイク式の2種類があります。

クリップ式なら、三味線の天神の所に引っ掛けて下さい。

マイク式なら、机の上に置いて下さい。

 

それでは、チューナーを使い「4本」の「二上り」に合わせたいと思います。

チューナーのメモリを見て、一の糸を弾きながら糸巻きをまわして調整して下さい。

チューナーに「C」の表示が現れ、メモリ真ん中になればピッタリ音があった証拠です。

それが、C(ド)の音です

津軽三味線では、「4本」の高さという事になります。

 

次に、ニの糸を合わせます。

一の糸と同様、糸巻きを回して、チューナーの「G」のメモリに合うように調整します。

 

最後に「三の糸」です。

これも、糸巻きを回してチューナーが「C」のメモリに合うように調整します。

 

いかがでしょうか?

すごく簡単な方法ですね。

試行錯誤しながら自分で調整する事が大事です。

 

チューナーを使ってのチューニングを薦めない指導者も多いと思いますが、耳を鍛える意味は十分あります。

慣れてくれば、すぐにチューナー無しでも合わせられるようになります。

 

演奏途中で調子が狂わない為の秘訣

三味線の糸は、ナイロンや絹といった素材を使っています。

このため、すぐに伸びてしまいます。

なので、演奏の途中でもチューニングしたはずの調子が変わってくる事がよくあります。

ここでは、少しでも調子が狂わないようにする為の「糸のしごき方」について解説したいと思います。

舞台上で三味線の奏者がよく糸を引っ張っている仕草を見たことがあるかと思います。

あれを「糸をしごく」と言います。

演奏をしている途中で音程が変わらないようにするための、大事な作業です。

その仕草もまた、見ていてカッコイイんですよね!

少しトークを交えながら、三味線の糸をしごく!

なかなかできませんが、これもなれてくれば「様(さま)」になります。

舞台上での、とても大事なパフォーマンスのひとつとなると思います。

でも、実際にはなにをしているのでしょうか?

あれは、三味線の糸の全体のテンション(張力)を一定にする為の作業なんです。

普通に糸巻きを回して調整した三味線は、「駒」から「音緒(ねお)」までの張力と、「うわ駒」から「駒(竿の部分)」の張力と「糸巻きに収まっている部分」の張力がそれぞれ全く違います。

各部の名称については、以下の写真を参考にしてください。

この張力の違いが演奏中に「バランスを取ろうとする」のです。

張力の緩(ゆる)かった糸巻きの中の糸が、張力の強かった竿の部分の糸に引っ張られて、徐々に竿の方にと出てきてしまいます。

これが、演奏中に緩んでしまう原因なんです。

奏者は経験から舞台上の温度や湿度だどで、演奏中にどのくらい緩んでしまうかよくわかっています。

なので、演奏前に糸をしごいて、できるだけ全体のテンションを一定になるようにしています。

具体的には、竿上の糸を右手でつまみ、駒の側からうわ駒の方に向かって、引きあげながら滑らします。

三味線の糸の調子が狂わない為の「糸のしごき方」

中指、薬指、小指で糸を持ち上げ、親指で上から抑えるようにテコの原理を使います。

そして、糸巻きの中の糸を引っ張り出すような気持ちでしごきあげていきます。

それに合わせて、音程を調整していきます。

まず、右手の人差し指で糸を弾き,左手で糸巻きを調整します。

右手で、駒がわからうわ駒に向けて糸を強くしごきます。(1回め)

右手の人差し指で糸を鳴らします。

音が下がっているのがわかると思います。

で、左手で糸巻きを調整します。

続けて、右手で駒がわからうわ駒に向けて糸を強くしごきます。(2回め)

右手の人差し指でいとを鳴らします。

まだ、音が下がっているので、左手で糸巻きを調整します。

繰り返し、右手で糸をしごきます。(3回目)

まだ、音が下がっているようなら、左手で糸巻きを調整します。

このように何回も何回も糸をしごきながら、音程が下がらないところまで続けます。

伸びやすい時は、10回しごいても、まだ音程が下がることがあります。

また、強く引っ張りすぎて「糸が切れる」ということもよくあります。

気をつけて下さいね。

しかし、十分しごけている三味線は、演奏中に糸が緩むことはありません。

諦めずに、準備しましょう。

しかし、舞台上でこのパフォーマンスをこなせる奏者はなかなかいないでしょうか?

3本の糸を10回しごくのに、5分はかかるでしょう。

5分間舞台上で黙ってチューニングすると、間延びしてしまいます。

そこで、MCをしながらのチューニングができるようになると良いです。

観客は、あなたの話を聞きながらも、手の動きとだんだん調子があってくる三味線の音程に釘付けになることでしょう。

もし、それができないなら、ステージに上がる前に、あらかじめチューニングを合わしておくことをお勧めします。

僕もたまにチャレンジするんですが、なかなか MCをしても間が持ちません。

最後には、ついお客さんに謝って、無言で糸をしごく!という作業に入ってしまいます。

ははは!

それでも、またチャレンジしたくなるんですよね!

もしあなたが、ペラペラとしゃべりながら糸をしごいている僕の姿を見かけたら、「おお!頑張ってものにしたんやな〜!」と褒めてくださいね!

是非、この記事を思い出して下さい。

まとめ

今回はチューニング(調子の合わせ方)について、お話しさせていただきました。

基本中の基本ですね。

でも、これが本当に難しいんです。演奏中に狂っちゃうことはしょっちゅうです。

僕自身、少しでも良い演奏をしたいとの思いから、チューニングに関しても人一倍研究を重ねてきました。

それでも、「ん〜!難しい〜!」の一言ですね。

糸の太さや駒の状態、湿度や気温にも影響されます、

「なんでこんな難しい楽器、選んだんやろう?」

と、後悔している暇はありません!

あなたの演奏を待っている人が、きっといます!

「さあ、今日も頑張って!練習!練習!」

by つむぎ人 HIDE